酷暑におすすめ!~怪異薬膳の話

連日、茹だるような暑さが続いていますね。エアコンの風に当たるのも飽きてきた夏の夜、皆さんはどうやって涼をとっていますか?

今回は、体の熱を冷ます「薬膳の効能」と、背筋をヒヤリと凍らせる「怪異の物語」を掛け合わせた、少し風変わりな夏の涼み方をお届けします。
ゾクッと震えて、最後はフッと肩の力を抜いていってくださいね。

第1章:赤いスイカ🍉と生首

 

夏の風物詩といえば「西瓜(スイカ)🍉」

漢方ではスイカの皮は西瓜皮(すいかひ)。薬膳ではスイカは天然の白虎湯(びゃっことう)」と呼ばれ、体の余分な熱を冷まし、喉の渇きを潤す効能があり、熱中症予防や夏バテ解消には、塩(ミネラルが取れる天然塩がおすすめ。)を少し振って食べるのが最適な夏食材です。

夏には五臓の心(しん)の機能が活発になり、心(しん)に関連する色は。スイカは赤い食べ物の代表格。

ですが……あの熟した果肉の深紅と、黒い種の並び。どことなく生々しさを感じたことはありませんか?

明治・大正の文豪・岡本綺堂の短編に『西瓜』という作品があります。
この作品を読むとスイカを見ただけでヒンヤリ&ゾクっとするようになること間違いなし。

 

🩸岡本綺堂の『西瓜』

 

現在の静岡県(遠州)を舞台に、江戸時代の古文書に記された「西瓜が生首に変わる」怪異事件と、主人公の大学生を巻き込む幻覚とが交錯するサイコホラー的な怪談です。

主人公の家にある古い写本には、「西瓜が生首に変わる」という奇妙な話が記されていた。それを読んだ主人公は「西瓜」に取り憑かれたような怪異に次々と見舞われ、「西瓜」の幻想に翻弄される。
以下は写本の内容。

 

享保十九年の江戸。
使用人が主人の親戚の家に西瓜を届ける途中、番屋に呼び止められ、風呂敷を開くと——
そこには醜い女の生首が包まれていた。

しかし詮議のあとに見直すと、首はただの西瓜に戻っている。

こんな物を他家へ届けるわけにはいかないと、使用人は西瓜を持ち帰った。
主の妻が風呂敷を開くと、再び生首が現れ、悲鳴を上げる。
主が駆けつけて確認すると、そこにはまた西瓜しかない。
西瓜なのか、生首なのか、誰にも判別できない。
奇妙に思った主が西瓜を切ると、中から青蛙が跳ね出た。
その足には、一本の長い髪の毛が絡みついていた——

 

スイカを一口かじるとき、その冷たさは効能なのか、それとも物語の怪異が連れてきた涼気🧊なのか……。

第二章:中国の怪奇幻想小説〜蒲松齢(ほしょうれい)が紡いだ、異界の涼

 

中国・清代の文人、蒲松齢(ほしょうれい)が著した怪異短編集『聊斎志異(りょうさいしい)』をご存じでしょうか。

ここには、妖怪や幽霊、怪異と人間が織りなす不可思議な物語が収められています。

その中の「道士と瓜(梨となっているものもあります)の木」という話は、

市場で貧しい身なりの道士が怪しい術を使って人々をイリュージョンの世界に巻き込んでいきます。読んでいると自分も幻想の世界に引き摺り込まれるようでゾッ😱とするんです。

 

市場で瓜を売る商人が、みすぼらしい道士に施しを求められるが、冷たく追い払う。


奉公人が一つ渡すと、道士は静かに微笑み、瓜の種を地面へ落とす。
その瞬間、土がざわりと脈打ち、黒い影のような芽が伸び、木が異様な速さで成長し始める。
枝はきしみ、花は白く光り、重たげな瓜が鈴なりに実る。


群衆は歓声を上げるが、どこか“生気のない木”に目をそらす者もいた。
道士は無言で瓜を配り続け、やがて木を鋤で伐り倒す。
その音は骨を割るように乾いていた。
商人が荷車を見ると――
瓜はすべて消え、車の棒が一本だけ、まるで抜き取られたように消えている。


道士が担いでいった“瓜の木”と同じ形だった。
道士の姿はもうどこにもなく、市場には、さっきまでの歓声とは違う、異様なざわめきだけが残った。

 

瓜科(ウリ科)の食べ物といえば、先ほどのスイカもそうですが、苦瓜(ゴーヤ)、冬瓜、キュウリなどそのほとんどが「体の余分な熱を冷やす」性質を持っています。
その中でも苦瓜は、夏に労わるべき心(しん)に関係する五味、苦味で、瓜科のスーパークール❄️代表です。
苦味には熱を覚まし、余計な湿を乾燥させ、排泄をうながし、解毒などの作用があるので、夏にはぜひとも取りたい食べ物です。

また、この短編の中の「桃盗人(ももぬすびと)」もゾクッとするにはおすすめの作品。
ただし桃は温性なので体を冷やす効果はありません。

 

第三章:漆黒の恐怖😱!〜五倍子(ごばいし)の怪

最後に、さらに怪しいお品をご紹介しましょう。

こちらも夏にはぴったり。余分な熱を鎮め、汗のかきすぎにも効果があると言われている五倍子(ごばいし)という、生薬があります。

これはヌルデという木の葉に、ウルシワタムシという虫が寄生して作られる「虫瘤(むしこぶ)」を乾燥させたもので、薬膳や漢方では強い収斂作用(引き締める力)や解毒に用いられる収渋薬です。

収渋とは「体内から出過ぎてはいけないもの」を止める作用のことで、多汗、出血、下痢(冷えからではない)、頻尿、咳などを止めます。

また、五倍子(ごばいし)は鉄と反応させると黒色に染まる性質があり、日本で「おはぐろ(お歯黒)」の重要な原料でした。

おはぐろといえば、思い出すのは

👻妖怪「お歯黒べったり」

 

のっぺらぼうの顔に、さけんばかりの大きな口が開いており、そこには漆黒の歯がズラリと並んでいるという恐ろしい風体です。

古い映画に出てくるお歯黒の女性は魔除けや成人した証の意味があったとはいえ、ちょっとゾッとしませんか?

五倍子に含まれるタンニンには殺菌効果もあったようで、お歯黒には歯周病や虫歯予防の意味もあったようですが。

⚔️「首化粧(クビゲショウ)」にお歯黒

戦国時代、討ち取った敵の首を実物以上に立派に見せるために、血や泥を洗い落とし、白粉を塗り髪を整え、五倍子で歯を黒く染めたりという「首化粧(くびげしょう)」というおどろおどろしい風習がありました。

討ち取った首の高貴な武士はお歯黒をしていたため、身分の低い生首でも、お歯黒をすることで「敵の対象の首をとった」と偽ることもできたそうです。

戦場近くの村では、死後、五倍子で口元を黒く塗られた名もなき男たちの怨念が、夜な夜な生首となって空中を彷徨ったとも伝えれています。
こわっ😱!!

ちなみに五倍子は白髪染めにも使えるそうです。五倍子エキスが配合された市販のトリートメントもあるそうですよ!

おわりに:酷暑には「心の冷房」を⛄!

怪異はまさに「心の冷房」

怪異と薬膳を掛け合わせて体の中からこの過酷な夏を乗り切りましょう。

赤〜いスイカにかぶりついて、少しだけ背筋を凍らせ、フッと肩の力を抜いて休んでみませんか?

あなたの夏の夜が、涼やかで心地よいものになりますように!!

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