秋の養生

夏の暑さのピークが過ぎ、朝夕の風が爽やかに感じます。もう季節は秋なのですね。

秋とは、立秋(8月7日頃)から立冬(11月7日頃)の3か月を言います。秋は、夏の暑さで強まっていた陽気(陽)が減り、代わりに冷気(陰)が強まっていく時期になります。この変化に身体も対応していくことが大切になります。対応が難しいと不安になり、精神的な症状も現れやすくなります。秋は、夏にしっかり活動した結果を収穫していく時期です。ですから、秋は焦ったりするのではなく、おおらかに過ごすと良いです。

涼しくなり、気持ちの良い秋の風ですが、夏の暑さで緩んだ肌には、負担が大きくなります。冷えたり、乾燥しやすくなります。冷えに気を付けて外出時は1枚羽織るものを持って素肌を外気から守りましょう。

秋は空気が乾燥します。乾燥した空気はのどや鼻の粘膜などに炎症を起こしやすくなります。呼吸器系や、東洋医学では肺と関係の深い大腸も無理のないようにしましょう。

◎秋と『肺』

秋は、『肺』が最も影響を受けやすい季節です。東洋医学では『肺』は、解剖学的な肺のみでなく、気管支や鼻などの呼吸器系と皮膚、皮毛などを示します。それは、外の空気を取り入れる呼吸器系と外界と接している皮膚のはたらきになります。

◎感冒の予防と感冒の初期

『肺』は、乾燥が苦手です。秋は、乾燥から身体を守り、寒い冬を越すために免疫力をつけることが大切です。皮膚は肺と関係が深いとされています。乾布摩擦は、皮膚を摩擦することで、感冒を予防します。

感冒の時に、ウイルスは口、鼻から人の身体の中に入ります。それに伴っておこる背部がぞくぞくするような悪寒、発汗、肩甲骨当たりの筋肉の緊張などは体の表面に出ています。東洋医学では、その症状は体表部から身体の中に徐々に侵入していくと考えます。体表部を強くすることが病邪を身体の中に入らないようにする抵抗力になります。

◎初期の感冒によく使われる漢方薬

初期の感冒によく使われる漢方薬は、麻黄湯(マオウトウ)葛根湯(カッコントウ)桂枝湯(ケイシトウ)があります。これらの漢方薬は、身体の表面の血流、筋肉の緊張などを調整して、悪寒・発汗・筋肉の緊張などの感冒の症状を改善します。現在の研究では、抗ウイルス効果もあることがわかってきています。

◎潤す漢方薬

麦門冬湯(バクモンドウト)は、肺を潤すとされています。

当帰飲子(トウキインシ)は、皮膚の血行を改善し、皮膚の乾燥防止にも使われています。

◎秋のうつ症状

秋に『肺』が影響を受けるのは、身体の乾燥だけではありません。『肺』は悲しみ・憂いと言った感情に深く関係しています。そのため、秋は悲しみ・憂いといった気持ちが強くなります。

秋は、夏より少しペースを落として、今まで行ってきたことのまとめをすると良いといわれています。

◎秋にお勧めの食物

肺や身体を潤す作用のものがお勧めです。果物は、朝、食べることがお勧めです。

辛い物は、発散する力が強いものが身体を空ためてくれますが、乾燥につながることがあります。酸っぱい物は、身体を潤してくれます。辛い物は少なめに、酸っぱい物は多めに摂ると良いです。

白色の食べ物は潤すものが多いと言われています。

[野菜]レンコン、サツマイモ、銀杏、白きくらげなど。

[果物]リンゴ、梨、ブドウなど。

梨は、夏の終わりから秋にかけて旬のものです。豊富に含まれる果汁は、肺を潤す作用がします。が、食べ過ぎると身体の熱を奪う作用もあります。身体を温めて潤す作用のある蜂蜜を合わせて、梨を加熱すると潤す作用も増え、温まるので良いです。