卵子のユメちゃんものがたり

これは卵子のユメちゃんが精子のタケル君と出会い受精するまでのストーリーです。

卵子達の成長

超音波でも見えないほどの小さなユメちゃんはママの卵巣の中でたくさんの仲間達と眠っています。ユメちゃん達、卵子の原始細胞は自分達の順番がくるまで栄養を充分にとりながら、ゆっくり成長をまちます。

超音波で見える大きさにまで成長できるのは最初の数の1%程度しかありません。

大きくなったユメちゃんは数個の仲間達とここまで成長できた事を喜びあっていました。でも、この中で排卵できるのはたった1個です。

ユメちゃんは仲間のノゾミちゃん、カナエちゃん達と別々に深い眠りから目覚めます。それぞれにアタックする順番が来たのです。卵巣の中でユメちゃん、ノゾミちゃん、カナエちゃん達が選ばれた瞬間から他の育ってきた卵胞は毎回消えていく運命です。

3月の卵子ノゾミちゃん

ノゾミちゃんは肩をたたかれた様に思いました。自分の順番がきたのです。目覚めたノゾミちゃんは成長が始まり、卵胞が2cmの大きさになります。ママは透明な頸管粘液をいっぱい作って排卵の準備を整えます。そこに黄体化ホルモン(LH)が多量に分泌されると卵胞がはじけてノゾミちゃんは押された感じになりました。飛び出しました。卵管采も優しく手を広げて包み込んでくれました。卵管に入っていきます。ノゾミちゃんは周囲を見渡しました。「精子が誰もいない!」ノゾミちゃんはそこで待つ事にしました。待っても、待っても来てくれない「どうしよう!」仕方なく前に進みます。与えられた時間は24時間です。卵管の最終段階に到達した時に精子の一群が進んできました。でも、すでにノゾミちゃんは卵胞をとびだしてから15時間も経ってしまい元気がなくなっています。とても受精に向かうエネルギーが残っていません。

タイムリミットがきてそのままノゾミちゃんは果ててしまいました。

4月の卵子カナエちゃん

今月は成長したカナエちゃんの番です。ノゾミちゃんの時のように押された感じになり、膜も通過できて卵胞から勢い良く卵管采めがけて外に出ました。「あぶない!」タイミングが悪いと卵管采の手にキャッチされません。キャッチされないと迷子になり消えていく運命となります。どうにか手の中に入りました。「でも、何か変!道が細く通れない!」卵管の弾力が少なく進めなかったのです。排卵された卵子の寿命は24時間です。右往左往しているうちにカナエちゃんはどんどんしぼんでいきました。

赤ちゃんが早くほしいと思っているママは卵巣や子宮の働きが良くなる様に漢方薬で体質改善を始めました。血液が1回変わるのには3ヶ月はかかると言われたので少し時間をかける事にしました。飲んでいるうちにお腹や腰が温かく感じられ、下半身の冷えや生理痛もなくなり体調が良くなってきました。これならきっと良い卵子も育つはずと思いました。(漢方薬の働きは骨盤内の血液量を増やし、流れも良くなります。また卵管の弾力度も増し、卵子の通りもスムーズになっていきます。)

9月の卵子ユメちゃん

その頃ユメちゃんは卵巣の中ですくすくとりっぱな卵子に成長していました。いよいよユメちゃんの番です。ユメちゃんはママからの指令がいつ来るのかとドキドキしながら待っていました。あ!きました。黄体化ホルモン(LH)です。ユメちゃんは思い切って「エイッ」と卵胞から飛び出しました。排卵されなかった他の仲間達はユメちゃんに未来をたくし「ユメちゃんガンバレ!」と応援しながら消えていきます。

ユメちゃんは成長も充分だし、形も真丸、完璧!外側の膜の状態も良いし、今度こそ、と一直線に卵管采の手に向かいました。卵管采は大きく手を広げたような形で「ここよ」と待っています。手の中にしっかり包み込まれました。卵管の太さも今回は大丈夫。ユメちゃんはその中をぐんぐんと進んでいます。

「ユメちゃ~ん」とタケル君やヤマト君達に呼ばれた様な気がしました。見上げるとタケル君やヤマト君達みんなでユメちゃんを取り囲んでいます。その中の一人だけと手をつなぐ事ができます。「あ!タケル君だ!」ユメちゃんはさっと手を伸ばしました。タケル君がその手をしっかりとつかみました。

こうしてユメちゃんとタケル君は受精卵になることが出来ました。

これから誕生までじっくり40週かけて成長していきます。

追記

女の子は胎児の時に約700万個も(卵巣に眠っている卵子)原始卵胞が作られます。

生まれる頃には3分の1まで減少します。女の子は生まれる前から卵巣にたくさんの卵子を準備しているなんて驚きですね。思春期を迎える初潮の頃には多くの卵子は消滅して約20万個になります。そのあと更に選択が続けられます。卵巣に眠っている原始卵胞は超音波では見えない大きさです。生き残った原始卵胞は栄養を充分とり大切に保護され未来を委ねられます。卵巣の中で自分の順番がくるまで原始卵胞としてひっそりと潜んでいます。(一人の女性が一生の間に排出できる卵子の数は約500個と言われています。)

最近では卵巣年齢がわかるAMH(アンチミュラー管ホルモン)の値で残存数の目安がわかるようになりました。あくまでも卵子数での目安で=卵子の質ではないのですが参考になります。

毎月の生理は卵子が排卵されることで高温期が出来た結果ですね。大切な卵子を守るためにも食事や睡眠などの生活の仕方を考えましょう。

精子のたける君が卵子と出会うまでのストーリーです。